ガンダム30周年でなんか書こうと思ったらもう師走だよ

『機動戦士Ζガンダム』について 2/3

 『機動戦士Ζガンダム』は、前述のとおり、若いガンダムファンにガンダムをつくらせる、というコンセプトの作品であったのだろうというのが俺の解釈だ。普通ならこれは“マニアが作りマニアが買う”といったマニア市場の構図にハマるはずである。
 もちろん当時はまだビデオコンテンツ販売全盛期の時代ではない。しかし“受け方”としては当時すでに、作り手と受け手の同類意識のようなものがある作品がつくられていた。『超時空要塞マクロス』やTV版『うる星やつら』などだ。文化祭みたいな熱気をもった作品であり受容のされ方だった。
 『Ζ』もまた、本来なら、そうした“文化祭”アニメとして伝説になる可能性を秘めていたはずだ。しかしそうした受容のされ方はなされなかった。なぜか。

 それは富野監督が欲張りすぎたからではないか、というのが俺の理解だ。
 キャスティングディレクターに徹して“祭り”にすればよかったのだが、きわめて真面目に「ガンダムの続編」をつくってしまった。

 「ガンダムの続編」としての部分、大戦終結後の政治的混乱を描くという「設定」が、じつに野心的で素晴らしいのだが、これを若いスタッフにやらせる、というのは無謀であったように思う。
 富野監督は、基本的に「設定」と「演出」に才の走るタイプである。どれほど素晴らしい「設定」があっても、そこから「絵」と「話」を取り出すことが出来なければ、作品としては弱いものになってしまうだろう。
 素晴らしい斬新な「設定」であればあるほど、それと格闘して「絵」や「話」を取り出すのは、相応の実力が必要になるわけだ。「スタジオワーク」でじょじょに力をつければいいというパートではないはずだ。

 『Ζ』の“難解”さのひとつは、「設定」から「絵」や「話」を取り出せていない、というのが原因である。
 たとえば政治勢力の政治的意図が「絵」になっていない。初代でいえば「コロニー落し」という「絵」がない。「毒ガス」では「絵」にならないわけだ。これでは主人公の立場が伝わりにくい。
 主人公の立場を「設定」から取り出せなかった、ということは、ラスボス的なキャラクター、シロッコにも同じことがいえた。「設定」から悪人として取り出せていないのである。

 このときの富野監督は欲張りすぎたとも思う。
 メカが先鋭ならそれ以外は抑えるとか、設定が先鋭ならそれ以外は抑えるとか、そういうバランスがなかった。ぜんぶ先鋭でいこうとしてしまった。
 このあたり、「ニュータイプ論」の暴走、ということと似ている。富野監督のもっている危うさのひとつなんだろう。真面目すぎるしラジカルすぎる。

 もっともそれが魅力でもあるのだから、富野ファンをやめらない自分でもある。
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コメント

富野監督の場合

 作劇者として「インパクト」を重視するの人間だとも思うんですよね。

 だから台詞にしても、文法を「わざと外す」などして、結果的に印象を強める感じと。

 あと『Z』を作るに当たって、敢えて初代的な作劇法を取ってないんですよね。

 むしろそれに逆らったともいえるくらいで、それが「続編」「リメイク」「アンチテーゼ」の三つの要素を兼ね備える『Z』の特異性につながったというか。

 
 しかし結局のところ、『Z』という作品の特異性は当初の予定というより、結果的に偶然生み出されたという感じですね。

 それはやはり「カミーユ・ビダン」という傑出的なキャラを完成させた事に尽きるわけで、そしてそれは「取り出す」のではなく「滲み出る」という形によって成り立っているとも。

Re: 富野監督の場合

 コメントありがとうございます。

 富野の場合、作劇が格段うまいとは思わないんですよね。ストーリーテラーとしては超一流ですが。
 俗にいう富野節も、本人の言葉づかいもありますけど、作劇の弱さを補うところにも頻出するので、俺自身はその点では評価してないんです。

 『Z』の場合、企画の段階で無茶だったと思うんですよね。

 >それが「続編」「リメイク」「アンチテーゼ」の三つの要素を兼ね備える『Z』の特異性

 仰るとおりだと思います。
 そういった無茶で野心的な試みのある作品を、若者たちにやらせる、というのはどうだったんだろうと。

 ただその軋むような歪みが、同時に魅力にもなっているという厄介さが、俺にとっての『Z』です。

 >それはやはり「カミーユ・ビダン」という傑出的なキャラを完成させた事に尽きるわけで、そしてそれは「取り出す」のではなく「滲み出る」という形によって成り立っているとも。

 このあたりも同意です。「取り出せていない」がゆえの歪みが、カミーユをしてカミーユ足らしてもいるのですから。
 とくにTV版ですね、俺の場合はどうしても。
 作品が呼んだのか、あるいはカミーユが呼んだのか、わかりませんが、特異な何かが「滲み出て」います。
 とにかく悲劇としてのパトスが尋常じゃないんです。

特異性

 そういった「滲み出し」が出ている別の例は、やはりシロッコですね。

 彼もまた背景が謎のままで終わった男ですが、あの独特のビジュアルと島田さんの演技が合わさって、とにかく「異様」で「普通じゃない」というのは分かる感じと。


 あと若手の抜擢として、この作品に関わった多くのクリエーターが後に大きな飛躍をしているのも注目ですが、自分的にその一人として注目したのが、最終回を演出した川瀬敏文氏。

 最後のゼータとTHE-Oの戦いで、脚本では(『SEED』最終回と同様の)「ビームサーベルでの一撃」とされていたところを「ウェイブライダーでの体当たり」に変更した本人だとの事ですが、後の「エルドランシリーズ」での多くの「必殺技」シチュエーションを演出したのも納得と。

Re: 特異性

 コメントありがとうございます。

 >そういった「滲み出し」が出ている別の例は、やはりシロッコですね。

 俺の場合、そこがピンと来ないんですよね。そのへんが『Ζ』にいまひとつノレなかった理由でした。
 物語が弱いのに芝居でなんとかしようとする富野の悪癖が出ていたように感じられたんですね。
 そのあたり含めて、やはりもう一度観返さないとダメかもしれませんw。

 川瀬敏文について
 >最後のゼータとTHE-Oの戦いで、脚本では(『SEED』最終回と同様の)「ビームサーベルでの一撃」とされていたところを「ウェイブライダーでの体当たり」に変更した本人だとの事ですが、後の「エルドランシリーズ」での多くの「必殺技」シチュエーションを演出したのも納得と。

 それは知りませんでした。そういうことがあったんですね。しかしZINさん、ほんとうに何でも知ってるなー。勉強になります。
 そういった若手育成こそ『Ζ』のいちばんの宝物なのかもしれませんね。

前作の手法を変えるという意味では

 こちらも『ゴッドファーザーPARTⅡ』に近い感じなんですよね。

 前作の人気と評価の高さを考えればというのも凄いですが。

Re: 前作の手法を変えるという意味では

 コメントありがとうございます。

 >こちらも『ゴッドファーザーPARTⅡ』に近い感じなんですよね。
 >前作の人気と評価の高さを考えればというのも凄いですが。
 
 仰るとおりだと思います。“前作の手法を変えるという意味”ではまったくそのとおりですね。富野とコッポラ、似たところがあるのかもしれません。ともに叙事詩的作品を撮らせたらうまいとか。
 世評高い『PARTⅡ』ですが、面白いことに、コッポラ自身は、後年その製作に後悔の念を抱いたらしいですね。
 そのあたりも富野と似ているかもしれません。

 富野が『新訳』を創ってしまうあたり、コッポラが『特別完全版』を創ってしまうあたり、そこにも共通点があるようなw。
 ……一部の旧作ファンに「余計なことしやがって」と思われる意味合いでw。

アナグラム

 実は先日気が付いたんですが、実はカミーユ(Kamille)の綴りについては、入れ替えると「マイケル」と読めないでしょうか?

 もちろん完全ではありませんが、逆にそれこそそれっぽいという感じで。

Re: アナグラム

 コメントありがとうございます。

 ご存知でしょうが、カミーユはロダンの愛人カミーユ・クローデルから取ったといいますね。

 とはいえ富野の場合“神がかった”偶然があるそうなので、カミーユがマイケルのアナグラムの可能性もあるような気もします。
 JINさんの仰るとおり、富野が『ゴッドファーザー』の影響下にあることまでは、おそらく明白であろうからです。

当時はまだ無名だった

 アル・パチーノと飛田さんが重なる部分も多いですよね。

 「新人抜擢」としては、後の白鳥哲さんも強烈でしたが。

Re: 当時はまだ無名だった

  コメントありがとうございます。

 >アル・パチーノと飛田さんが重なる部分も多いですよね。

 なるほど。それには考え及びませんでした。「重なる部分」というのが気になりますね。

 >「新人抜擢」としては、後の白鳥哲さんも強烈でしたが。

 たしかに。

 富野監督の声優発掘・育成能力って何なんでしょうね? やっぱり彼の“才能”の一言ですますしかないんでしょうか。

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