ガンダム30周年でなんか書こうと思ったらもう師走だよ

Gのなんじゃとて 第22話から第24話 ネタバレあり

 ・第22話「地球圏再会」
 コックピットに座ったクン・スーンがメカニックと話している最中に、ローゼンタール・コバシがわざわざバーニアまで使ってVサインで「うふん」と横切るのが面白い。うざい。しかしついに始まるレコンギスタに浮き立っていることもわかるいい場面でもある。
 「キア隊長、これが長年夢に描いてきた光景ですよね」クンがロケットペンダントの写真を見ながら哀切に呟く。男女の関係だったことがわかる。その横でチッカラ・デュアルまでローゼンタール相手にはしゃいでみせるのだから悲劇の重さが違うことが描かれる。対比的ないい流れだ。
 「やらせろってきかないのよ」とマニィ。ノレドのあたまをよこからポンポンしている芝居がいい。ふたりの親密さも表していて微笑ましくも可愛い場面だ。
 ラ・グー総裁がかつらをとり服を脱ぎだしていくとき、カメラはアイーダを追う。彼女はじょじょにテーブルをまわりこんできて、彼の真正面に立つ。このときじょじょに緊張を高めていく芝居が好きだ。最後は威儀を正してみつめる。カメラはラ・グーの衝撃的な姿を映す。
 スカッシュをしているアイーダ。「わたしは人類の女性として健康!」と独白する場面も好きである。人類の女性、という言い回しがいい。神話的だ。
 「ダハックのカバーがダーマですか」「カバーなんて失礼な!あれだってモビルスーツみたいなものです」「失礼な!」と反射的に言ったところは力がこもっているが「あれだってモビルスーツみたいなものです」の声には確信がなさげなのは意図的な芝居なのだろうか。
 「やつは最前線、こちらは後方だもんな」温度差を知っているハッパである。しかしその物言いはベルリを一人前として認めているそれでもあって時の流れを感じさせてくれるいい場面だ。
 「いまは泣きたいんです」とアイーダ。「えー?」となるノレドは、なにか思い当たったのか、ハロビーの体重計機能をつかう。この流れが可笑しい。「聞キタクナイダロ聞クナ」とハロビー・ノベル。ここも笑える。「昨日カラ0.5g増!増!」「ひー」この流れも可笑しい。
 寝袋で熟睡しているリンゴ・ロン・ジャマノッタ。そこにトイレに向かう同僚が足をかるく引っ掛ける。寝ぼけて半身をおこす。「なんですか……ラライヤさんたら痛いなー」と夢のなかまでラライヤのリンゴ。一途な男である。
 「自分の庭に帰ってきてもこれだってんだからな」とドニエル・トス艦長。その画面奥でステアが屈伸?運動。ステアの謎の運動も二度目を見せられると彼女にはそういう習慣があるとわかる。こういう描写が好きだ。
 「G-ルシファーのノレド・ナグは里帰りの気分!」のノレドがかわいい。声優さんの演技がいい。「私だってキャピタル・タワーには縁がありますし」とラライヤも嬉しそうだ。「ラライヤGO!」とノレド。
 「ベルリ、バックパックの使い方には気をつけてくれよ」とハッパ。「いい完熟飛行になります!」とベルリ。ここのやりとりもいい。新装備で神経質になっていた場面と対比的ないい場面である。
 一撃で敵MS部隊を撃破したモビルスーツ部隊は機嫌がいいがベルリは憂鬱だ。「出力は100%じゃなかったはずだけど……あれがフォトン・トルピードの威力だってのか!」その破壊力の凄まじさに苛立ちを隠せない。ここの芝居もベルリの性格をよくでている。
 「母に……ウィルミット長官に会いに来たんです」「ああ」のやりとりも面白い。「ああ」というときの軽んじた感じがいい。タワーの完全軍事化を見せられた後だけにそのニュアンスは意味深長だ。
 「私がいるかぎりはタブー破りはさせませんからね」と言われハッと母から身を離す芝居もいい。タブー破りがどうのという単純な世界ではないことをベルリはすでに知ってしまっているのだ。母の腕のなかにはいられない。
 ウィルミットはベルリが「姉さんは僕の仲間なんですよ」と言ったとき一瞬だけ「姉さんって……」と反応する。しかしそれ以上ベルリに関心を寄せることはなかった。だから「いきましょう」と退室するときアイーダがベルリの肩を抱いているのは素敵な場面だ。
 「みちゃいられんな。マスクにサラマンドラを沈めさせてフルムーンに向かわせりゃいいのに」と内心独白するクンパ。内心を明かさなかった今までの描写からは考えらない場面だ。しかしこれによりマスクがクンパの配下から抜け出てたこと、「事態は私の思惑などとっくに乗りこられえています」というクンパの台詞が本当だったことがわかる。マスクを配下にしていたらマスクの活躍もクンパの策謀のひとつという可能性を視聴者に残してしまうからだ。ここは“キャラクターより「親切」を選んだ”わけだろう。視聴者にすればクンパがラスボスから脱落した瞬間である。
 「プライドにはなるからいい母さんだよ」と言うベルリはしかしどこか淋しげだ。ここの微妙な芝居もいい。
 「だけどこいつがビーナス・グロゥブ製って信じます?」「こっちがトワサンガ製というのも怪しいですよ」「なんでだよ」とリンゴ。「目、丸いじゃないですか」「そっちこそ宇宙で羽つきって恥ずかしくないのか」とケルベス・ヨー。このやりとりが可笑しい。
 ベルリが母親に会ったと聞かされれば羨望を禁じえないマニィだから「私だって負けない」と言ってルインに逢おうとする。モビルアーマーの操縦に不慣れなところをみせて皆の目を誤魔化せば「このまま真っ直ぐ、誰のせいにもしない。私、マスク大尉に絶対追いつく」と決行する。その際、舌で唇をなめるのが印象的な芝居だ。幼さを感じさせる顔で。
 「あれで宇宙海賊やってたのか」といぶかられるアイーダ。険がとれて、ほのぼのした雰囲気の集団を率いるお姉さん然としているからだろうか。女王の道は近いといった芝居なのかもしれない場面だ。
 「あれだ」マスクが乗っているはずの戦艦ガランデンを発見し「ルイン! ルイン・リー!」と思わず声を上げるマニィ。本名呼びだ。しかしバララ部隊に防戦されると「マスクー!光信号を読んでください!」と叫ぶことになる。この呼名の違いの妙がいい。だから艦砲射撃の危険のなかで思い浮かぶ名は「ル・イ・ン・リ」以外ありえないのだ。
 「圧倒的な味方になります! 受け入れます!」と熱くなるマスクに「どうしたんだ?」と艦長は驚くし勝手に部隊を下げられれば呆れもする。ここの芝居もいい。
 ヘルメットをなげてくるバララ。それをうけとめるマスク。「マニィの話信じます?」「信じるさ」ヘルメットをとりあげるバララ。そのまま着替え部屋に立ち去る。かがんだ後ろ姿を映すのがいい。
 「よくぞ無事に帰ってきてくれた」と手を広げるマスク。「はい先輩」とそこにとびこむマニィ。「ルイン・リー!」「マニィ・アンバサダ!」低重力環境で抱き合うふたり。窓ごしの別室で伸びをしているバララを一瞬映すのがいい。何事もなかった様子には掴んだプライドも掴んだサクセスもあるはずなのだから。

 ・第23話「ニュータイプの音」
 戦艦サラマンドラではクリム・ニックとミック・ジャックが艦長をはさんで話し合っている。艦長は航海日誌が趣味の彼だ。マスクがフルムーン・シップと手を組むのを防ぎたい、「このクノッソスの女(ドレット軍)も同じ」とミックが示せばそこにはマッシュナー・ヒュームの姿が映る。それはいいのだが一瞬そこに彼女の水着姿が。ここで視聴者は「ん?」となる。目の錯覚かな。ここのやりとりは視聴者への解説にもなっている。「親切」だがそれでもわかりづらい。勢力が多すぎるのだ。クリムのアメリア軍、マスクのキャピタル・アーミィ、トワサンガのドレット軍、ビーナス・グロゥブのフルムーン・シップと四つも勢力がある。これに独立した主人公勢力メガファウナとクレッセント・シップを入れれば五つだ。「艦長、なんでその写真は消えないんだ」とクリムが言えば画面にはマッシュナーの水着姿が乱舞する。バツが悪そうに呻く艦長。まーたやらかしているよこのひと、という流れが可笑しい。芝居だけみてれば楽しいというのはそういうことでもある。
 戦艦ラトルパイソンでベルリに背中にクリームを塗ってもらっている半裸のグシオン・スルガン総監。その姿に驚く兵士。意外だったらしい。それだけで“異例”さが伝わるちょっとしたいい芝居だ。異例的にリラックスしているスルガンと同様にアイーダ、ノレド、ラライヤもそれぞれリラックスした雰囲気だ。「えい」とスプレーをノレドにかけるラライヤ。「なにをお」と反撃するノレド。このあたりのキャッキャした芝居がかわいい。
 「弟!弟だと」と驚くスルガンに「そういう事実があったことはご存知だったのでしょう」とアイーダが言えば一瞬ベルリは思案気な顔をするというのは印象的な場面だ。だから「なぜ姉弟と信じているのだ、アイーダは」というスルガンの独白が意味深長に聞こえてくる。G-セルフはレイハントンではないラライヤでも操縦できるし、アイーダは“実家”のことはベルリとは対照的にすっかり忘れていた等、謎の余韻もある。視聴者が「ええ?」となる流れだ。
 「メガファウナで私達なりに協力させてください」と言って立ち去るアイーダの手をもって先導するノレド 低重力環境で宙に浮く脚に抱きつくラライヤ、というのも結束の強さをあらわすとともに微笑ましくも可愛い場面である。
 戦艦クノッソスではマッシュナーがパイロットらしい者をハグしている。「では!」「うん」ひとりひとりハグしていたようだ。最後は恋人ロックパイ・ゲティ。かかとをあげて背伸びしてハグするロックパイの仕草は彼のキャラクターを表しているいい芝居だ。マスクにはフルムーン・シップに接触させない、と張り切るロックパイに「からだは本当に大事にしてくれ」と言って送り出すマッシュナー。「精鋭を集めましたから!」とグッっと腕をあげるロックパイの仕草もかわいい。艦隊におけるマッシュナーの特殊な立場が出ている場面でもある。
 「ここはロックパイに任せればいい」と言うマッシュナーに「いーつもロックパイですか」とうんざりする艦長。以前そのせいでヒドい目にあっているのだ。「軍法会議ものだ」と憤ったこともある。しかしマッシュナーはこうして変わらすに前線に出ているのだから「将軍に告げ口してもいいですよ」と言われても無駄と知ってさらに憤懣がたまるというものだ。「気持ちよかったんだから」と色っぽく言われても「あーけっこうなこって」と投げやりになるしかない。ここの芝居もいい。
 メガファウナからはビーナス・グロゥブからついてきたMSポリジット部隊が出撃する。一機はよろめき一機は「G-セルフが待ってる!」と嬉しげにライフルで指し示す。「冗談でも味方にライフルを向けるんじゃない」と叱る隊長?機。このやりとりだけで彼らが素人同然であることがわかるいい芝居だ。「あの人達、戦争が怖いってわかってないよな」とベルリが懸念する流れにもなる。
 「寝坊しましたもんね」とミック。ハッとなる艦長。「少々だ」とクリム。ムカーとなる艦長。「出ますよ!」「ああ!」とふたり。真っ赤に赤面しぐぬぬと憤りを隠せない艦長。前景で芝居する艦長が可笑しい。
 艦砲射撃を真正面から受けとめるMSガイトラッシュ。「誰に射ってんだよぉ!」と勝ち誇るロックパイ。ここの芝居が気持ちいい。
 「やめろ!ロックパイのいるところに射つんじゃない!ビームは狙い射て!」拳を握りしめるマッシュナー。「そーこまでかわいいか。ビームを狙って射つんだとよ」と艦長。この投げやり感、やる気の無さの演技がいい。
 ベルリG-セルフは戦場をもう少し近くで観たいとひとり前進する。「無茶はだめだ」と念を押すノレド。「あたりまえだろ」と笑うベルリ。その表情がカッコよく描かれているのがいい。
 「なにが不服なんだ」とクリム。「いいや別に」と艦長。ここの艦長の仕草とこわねがいい。ここの芝居で艦長が日頃の反感もあるのかクリムが言い訳がましく見栄をはっていると思っていることがうかがえるからだ。
 そのあとに「後ろではクノッソスとアーミィのブルジンが戦争やってんですよ」と言うミックに対して「敵同士の潰し合いなど好きにやらせておけ」と冷静に言ってみせるクリムなのだから戦線離脱のロジックが言い訳でも見栄でもないことがわかるという流れだ。
 ロックパイが「マッシュナー! 艦長まかせにしちゃだめです!」と独白した直後に被弾するクノッソス。マッシュナーが「回避運動遅いでしょ!」と責めると「貴様がさっさと撃ち落とさないからだ!」と責任逃れの艦長。小物感の芝居がうまい。いい味を出している。
 ふらふらと戦場に惹き寄せられる一機のMSポリジット。「あの光に惹きこまれちゃって」とパイロット。「ええ?惹きこまれないよ」とノレドは驚くが「怯えていればそういう心理にもなる」とベルリ。内奥を覗きこむようなこわねがいい。
 撃墜されたMSの爆炎に「ああ!光が!」と言ってMSポリジットはついに戦場に突入してしまう。「行かないで!」と追おうとするラライヤ、ノレドのG-ルシファーをベルリは引き止める。「戦争は無駄死を生むから!ノレドとラライヤはそこから動くな!」一瞬みせる苦悶の顔。この流れのなかのベルリがカッコいい。そこから動くな!ってところがとくに。
 「僕はG-セルフの義務を果たす!」ノブリス・オブリージュを感じさせる台詞がヒロイックな高揚感を呼ぶ。しっかりロボットアニメしているいい場面だ。
 ロックパイMSガイトラッシュは圧倒的な戦力差のあるMSポリジットをあっさり屠る。「ビーナス・グロゥブからきた人を!」激昂したベルリがG-セルフを駆る。ロックパイにつき従う“精鋭”MS三機をあっという間に撃墜する。ベルリG-セルフの全能感がたまらない場面だ。
 「その姿、G-セルフか」認識するロックパイ。MSガイトラッシュの性能でG-セルフを圧倒するつもりが逆に圧倒されてしまう。「な、なにぃ」「アサルトモード、使います!」と告げるベルリ。使います!と言ったときぎゅっと目をつむる。こういう芝居がいい。
 ロックパイは「マッシュナー!」と叫びながら散華する。そのとき宇宙にはしるものがあった。マッシュナーは最愛の人が死んだことを直感する。「ああ、わたしの男が」低重力環境で宙に浮き、脱力したようにふらふらと漂うところがいい。
 ベルリは一瞬嘔吐しそうになり「な、なんだ、こ、この寒気は」と震える。この一瞬嘔吐しそうになる芝居がいい。
 「だんまっくうっすいでしょぉぉ(弾幕薄いでしょう)」に噴く。クノッソス艦長の小物感は本当にいい芝居だ。死の危険が迫るなかでテンパる艦長と哀しみに涙しながらも冷静に戦況判断をするマッシュナーとの対比がいきてくる。
 理由のわからない寒気に震えるベルリだからラライヤやノレドに心配されてもうまく答えられない。両親が遺してくれたG-セルフに包まれているということだけはわかるから「G-セルフのベルリだって戦死することはありますから」と言われれば「G-セルフでだぞ!パーフェクトパックだってあるんだろ!」と動揺もする。「名前なんて希望でしょ。名づけた人の保証じゃないよ」と優しくさとされれば「そ、それはそうだけど」と答えざるをえない。この一連の流れがいい。ロボットアニメの高揚感、全能感からじょじょに正気に戻される。ガンダムしてる芝居だ。
 「褒めてやるよ、飛び級生!」「ありがとうごいやす」と言う応酬も素敵だ。「ありがとうごいやす」というのは変な言いまわしだがそれがケルベス・ヨーの心遣いへの礼なのだから違和感も感動にかえてもいいと思える。
 「キア隊長のアイディアなんですよ。尊敬しちゃうわ。ね?」に返す「そうなんだ」の棒読みに噴く。
 「ベルリ生徒が頑張ってくれたからですよ、お姉さん」と言うケルベスはまだベルリに心遣いをしてくれていて、それが彼のキャラクターを表しているいい芝居である。
 「シールドを失うほどの戦いだったんですね」と心配げなアイーダ。ベルリの変調をどこか探るような気配があるのだから「でも生きのびられました」とベルリが本調子を取り戻せていたことはよいことである。そう感じさせる流れがいい。

 ・第24話「宇宙のカレイドスコープ」
 マスクとジット団の主要メンバーが揃っている面前でマニィ・アンバサダを褒めてみせるバララ・ペオールなのだから握手を求めるのは自然なことである。「光栄です」とマニィが手を差し出せば彼女の懐まで入り込み耳元で囁くこともできる。「あたしはいっぱいいい思いをさせてもらったから大事にすんだよ」「え」「では」きょとんとしているマニィが取り残される。ここのやりとりは面白い。敵愾心を隠しているバララだが純朴すぎる相手にはこれぐらい言ってみたくもなる。ふたりの女の対照がいい。
 きょとんとしているマニィであればルイン・リーへのお願いも秘めやかな香りはしない。「ベルリと友達になってください」と言えるのはメガファウナに残してきた友人達のことも念頭にあったからだろうし二人の人となりを知っていると確信できるからだろう。「それはだめだ」と即答するルインはベルリがエリートであることが気に食わないのだから偏執の根は深い。「それは誤解です」と言ってしまえる純朴さはマニィのものだからベルリとアイーダの姉弟がレイハントン家の遺児だと無邪気に教えることにもなるのだ。「それが本当ならますます権力者になる血筋じゃないか!人に喰われる過去をもつクンタラなど虫けら以下に扱う奴らなんだよ!」と吐き捨てるルインなのだから彼もまた純粋といえる。ここのやりとりも面白い。ふたりはある意味似ているのだ。
 マスク搭乗のMSカバカーリーがバララ搭乗のMAユグドラシルに接触しようとするとひょいとよけられてしまう。そのたびにカバカーリーはズッコケる。これが五回つづく。バララがマニィを挑発したあとだけに面白さに味わいが出る。結局バララはマスクに五回も「バララ」と連呼させることに成功した。それで気が晴れるわけでもないから「ふざけたんじゃありません。機動テストです。こんなに速く動くなんて思わなかったでしょ?」とぬけぬけと言ってみせる。だからマスクは「たしかにいまの動きは形からでは想像できないな」と優しく言うぐらいしかできない。まだイチャつける余韻があるのだ。だからこそ可笑しな場面であってもバララの愛らしさが際立つ。
 「ビーナス・グロゥブの一%もみていません」とラライヤ・アクパールの生真面目な声。「ビーナス・グロゥブのラ・グーという方は?」と法皇の穏やかな声。「とても面白いファッションで、いっつもごめんごめんって、ね?」とノレド・ナグのいつもの声。以前と同じくまったく物怖じしない子である。「ね?」とふりかえられれば「謙虚な方でした」とラライヤも破顔する。ここのやりとりはかわいい。法皇と二人の少女の口調の差もいい。
 「母は第二ナットで待っています」とベルリが言えば「父は停戦協定の返事が遅いので出かけました」とアイーダが言うのだから実の両親のことを知っていたと法皇に言われれば驚きもする。「ご存知でしたか」と尋ねるアイーダに「いやザンクト・ポルトでお噂をきいていたということです」と答える法皇。このとき手すりにつかまっているラライヤが可愛い。ノレドが室外に目線を送る。それをベルリがみてふりむく。「姉さん」と呼びかける。いち早く退室するノレド。ベルリは法皇に挨拶した後アイーダに目線を送る。「わたくし、育てられた運命があると思っています。では」と挨拶をして退室するアイーダ。うんと挨拶を返す法皇。「運命」にか「では」にかあるいは両方にか判然としない。この場面も好きだ。室外になにがあったのか気になるし法皇の返事の意味も気になる。
 新型MAダーマや新型MSトリニティを受領されたクリム・ニックとミック・ジャックは決して暇なわけではないのだがそこにアイーダがやってくれば挨拶のひとつもやってみせるしかない。メガファウナはアイーダが父スルガン総督にその独立性を担保してもらっていたものだからアメリア軍の戦力たりえなかった昨日なので緊張がないわけでもない間柄といえる。だから開口一番「クリム、感謝します」と言えるアイーダは「昨日のサラマンドラの動きがあったから」と賛辞も忘れないわけで「姫さま」と言われ担がれてばかりいる神輿ではないことがわかる場面だ。手を合わせてそれを横にかしげる仕草が可憐なアイーダなのに、その間ずっと上方を見上げ感嘆の表情のベルリは真に愚弟といえる無邪気さだから「ご無沙汰です」と軽い調子の一言だけの挨拶は姉とは対照的にもほどがあるだろう。見上げていたMAダーマ、MSトリニティを指さして「すごいっすね、これ!」とやんちゃな仕草が可愛いベルリと上品な立ち姿で一緒に見上げるアイーダであればしっかり者の姉とその愚弟にしかみえない。「こういうものを持ってきてくれなかったら一生恨みましたよ」と軽口をたたくミックにも「ミック・ジャック、クリム・ニックにも私のわがままで迷惑をかけました」と深々と頭をさげるアイーダにはむしろ二人も恐縮するしわだかりも氷解せざるをえないのだから愚弟のベルリも「姉さん、すごいな」と内心独白することになる。姉弟の対照ぶりが微笑ましいしアイーダが確実に指導者として成長してきていることがわかるいい場面だ。姉のそばでは優等生を演じないでいられるベルリの無邪気さも印象に残る。
 「ロックパイの仇を討たせてもらってからなら戦争はやめましょうよ」「またそれか」というやりとりにはマッシュナー・ヒュームの美貌ごときでは重要案件の判断に影響させないノウトゥ・ドレットは愚かではないとわかる場面だ。「またそれか」とうんざりする芝居がいい。
 停戦協定を結ぼうとするスルガン総督のもとに駆けつけるクリム・ニックとミック・ジャックは入室するとき敬礼のひとつもなく部屋中央のテーブルの上を低重力環境のなか浮かびながら流れてくるのだから無礼でもあるし知らず傲岸でもある。勝てる戦争なのになぜ停戦協定なのかと問いつめるクリムであっても停戦協定の後のことまで考えているらしいスルガン総督の前に立てば「その後のことは、自分の頭で考えるんだな、少年」と言われてしまう。その台詞前の手で制止する芝居がいい。モビルスーツ戦や艦隊戦で活躍する天才クリムをみてきただけにこのスルガン総督とのやりとりは印象的だ。政治もやってみせる大人であればクリムといえども戦場ではしゃぐ子供にみえるという「お?」とくるいい場面である。
 キャピタル・アーミィの艦隊が出撃したことに驚くドニエル・トス艦長。その画面手前でメイク中のステラがいる。こういう細かい芝居が好きだ。
 「なんでお母さんが止めてくれなかったの」とノレド。その前席で饅頭を美味しそう食べているラライヤがかわいい。
 「クラウンの時刻表のことしか頭になけりゃ」と言うベルリもまたパーフェクトパックのマニュアルを手にしてコックピットに座っているのだから皮肉である。自分の職務に熱心なのは悪いことでもないしひとごとのように言ってしまえるベルリは子供だが母の擁護でもあるのだから本来的にいい子なのだ。皮肉な対比とともにキャラクター表現までしているいい場面だ。
 「長距離からの狙撃なんてパイロットを殺すだけですから」とアサルトの使用を断るベルリだからアイーダは彼のこだわりの深さを知る。いままでの活躍とそのなかに隠されてた純情なこだわりには感謝の言葉だけでは足りなくて「カーヒル大尉のことはもうあなたは忘れていいわ」とはっきり告げる。姉のそんな気遣いに頭をさげるベルリだがまだ生徒呼ばわりをしてくれるケルベス・ヨーはじめ皆が気を遣ってくれるのならガイトラッシュ戦の後の様子のおかしさに心配してくれていたこともわかる。「ようするにみんなを守って欲しんだよ、G-セルフの力で!」とまで言われればこだわりを捨てる覚悟もできる。メガファウナのパイロットたちの絆が素敵に描かれていて好きな場面である。
 「ブリッジのモニターで敵の艦隊チェック!」と元気よく宇宙遊泳するベルリにはラライヤとノレドも追ってきてくれる。そんな姿をみて「元気になってくれた」と胸を撫でおろすアイーダだからベルリと微笑をかわせることもできる。この流れは心が温かくなる。
 「キャピタル・アーミィめ!面白がって!」ここのドニエル艦長のキャの発音が好きである。いい芝居だ。
 「あの小娘を殴りとばしてマスクに嫌われるのも嫌だが、なにもできない女だと思われるのはもっと嫌だ!ユグドラシル、あたしの運勢を占え!」と内心独白するバララは本当に可愛い。いい女であるプライドもすぐれた戦士であるプライドも彼女は決して手放さない。男への未練を残しながら戦場に立つ危うさに気づかない無防備さがまた可愛い。悲劇の匂いしかしないがバララが魅力的なだけにもどかしい思いもする好きな場面だ。
 「ドレットとアメリアの艦隊が勢ぞろいなんてさ、お馬鹿さん!」と狂喜するバララは戦場にいる両艦隊を殲滅する勢いで攻撃する。それに賛辞を送るジット団とは対照的に、鬼気迫るその様子に「バララ、戦場に嫉妬をもちこむと死ぬぞ」と内心心配するマスクもまたバララへの情を残している。だからこそ悲劇へと収斂する流れは切ない。
 「フルムーンと言いますけど、これってただの輸送船なんですよ」とフラミニア・カッレ。レコンギスタの正当性を露ほども疑っていない。フルムーン・シップの化け物モビルアーマーが凄惨な殲滅戦をやっている最中の場面に挿入されるのだから、その穏和さは異様に引き立つ。皮肉めいてもいるし人のままならさが表れてもいる印象に残る場面だ。
 「アサルトを乱れビームの震源地に射ちこみます! それまでは前に出ない!」とベルリ。覚悟はできたようだ。それに呼応するアイーダ、ケルベス、ラライヤ、ノレド、リンゴ、その他のパイロットたち。「了解」「よく狙え」「そうです」「あたしがついてる!」「ビンゴだろ」「おお!」パイロットたちの絆を描写した場面を受けての流れなだけにエキサイティングだ。結束する人間たちの息づかいが聴こえてきそうないい場面である。
 「ここは逃げろってロックパイが言ってきたんです」とマッシュナー。「こんなときにも」と艦長。ここのやりとりも印象的だ。マッシュナーの台詞はレトリックにすぎないのか本当にニュータイプ的感応があったのか少しづつ狂気に蝕まれている描写なのかわからないからだ。こういう判然としないところが好きだ。
 遠距離から狙撃され動揺するバララ。「やつが来てるんだ」という台詞がいい。ロボットアニメ、はじまるよーと告知したような場面である。
 「フルドレスって、眩しいんだから!」のアイーダの台詞。ねらった台詞かもしれないと思いつつそれでも楽しがってしまうのだから富野ファンは度しがたいといえる。
 殲滅される危機のなかノウトゥ・ドレット将軍はひとりでも多くの者はキャピタル・タワーに逃げ込めと命ずる。敵前逃亡ではないかと問われれば、それでもいい、地球にさえ降りれば化ける、と言う。化けるとは何事かと問われれば、地球にさえ降りれば願いは化ける、と言う。ここは切ない流れだ。彼の地球への憧憬がよく表れている。彼の最期の台詞は「キャピタル……」と言いかけてのものだった。スコードではないのである。いままで敵役としてしか登場できなかったトワサンガ勢力だが、たったこれだけの描写で生きた人間たちの集団にみえてくるのだからいい場面と言いきっていいのだ。
 MAユグドラシルのコックピットをビームサーベルで灼くベルリG-セルフ。「ベルリか!」「バララ・ペオール!」顔見知りを殺害した。ベルリはしかし震えない。ここまでの流れのなかでこの場面をもってくるのがうまい。
 アイーダG-アルケインは戦艦ラトルパイソンに近づく。「お父様!宇宙服を着てください!」父は宇宙服を手に持っただけの準備前だとわかる。そのとき流れ弾が艦橋を貫く。宇宙に放り出される父スルガン。アイーダはあまりにもあっけない父の最期を受けとめきれない。一瞬目線を外しもう一度みる。ここで一瞬目線を外す芝居がいい。
 化け物モビルアーマーを持ちだしたマスクへの懸念を口にするも、前髪をかけあげるベルリなのだから戦場から離脱できたことをうかがわせる。そうしておいて水分補給をしようとする寸前でカットはかわる。作品内のベルリとは別に視聴者にだけ緊張感が残る。こうした流れが好きだ。
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