ガンダム30周年でなんか書こうと思ったらもう師走だよ

『機動戦士ガンダムF91』について 4/7 「時間」が想像させる“前日譚”

 『F91』は「時間」を扱った作品である。
 映画は時間芸術だというが、『F91』ほどあからさまに「時間」を感じさせる作品は少ないだろう。

 物語冒頭から「時間」の途中である。
 ヒロイン・セシリーが主人公シーブックに手を引かれて登場するのだが、ふたりの台詞から、シーブックが彼女を口説き落としてミスコンにエントリーさせるところまで成功したことをうかがわせる。賭けの対象になると聞いたセシリーが怒る場面で、シーブックがセシリーを口説いた動機があからさまになる。セシリーがシーブックにそれなりの感情を抱いて口説かれたのではないかと想像させ、シーブックの方は美人の女友達を利用して金儲けをしようとする悪ガキであることが想像できる。そうした“前日譚”が、物語冒頭のふたりのやりとりで、想像できてしまう。「時間」の途中というのはそういうことだ。

 シーブックの友達が自動車に集まる場面で「時間」が飛躍したことがわかる。集合場所のあたりをつける“前日譚”が省略され、待ち合わせたように、自動車に集まる。操縦は当然のようにシーブックに任される。ここにも“前日譚”が隠されているだろう。

 電話で父と連絡をとろうとしていたドワイトが別の自動車に乗っているのも「時間」経過を現している。シーブックたちとの距離感も感じさせる。シーブックが彼を救けるのも距離感だ。

 ロイ戦争博物館から出てきたタンクがまるで使い物にならないことが描かれるが、それでもシーブックの男友達はタンクで反攻するという。言いくるめられた“前日譚”が省略され「時間」が飛んでいる。

 「10年以上前の変形モビルスーツだぞ」という台詞で、変形モビルスーツが過去の遺物であることが判明し、そこに『Ζ』『ΖΖ』の時代との断絶という“前日譚”が隠されていることがわかる。ここでも「時間」が飛んでいる。

 退避口が使えないとわかると、女友達がシーブックのもとに集まる。ドワイトが臨機応変に対応できなかった“前日譚”をうかがわせる。シーブックなら当てにできるかもしれないという女友達との距離感も表現できている。

 23桟橋から避難するためにタンクを利用するが当然のようにシーブックが操縦している。このあたりも「時間」の飛躍と、シーブックの立ち位置が表現されている。

 スペースボートに食料を(どこからか)もってくるアズマたちの場面で「時間」経過を現してる。「食料」というのがわかりやすく“前日譚”を想像させている。

 スペース・アークと合流後、「傷口がふさがったんならもう吊らなくもいいよ」と言われる場面で、傷がふさがるまで「時間」が経過していることがわかる。

 「昔、こんな顔のモビルスーツがあったわね」「ほーらガンダムといったわね」という台詞で、ガンダム・タイプのモビルスーツが過去のものになっていることも「時間」経過を現している。

 「ニュータイプって?」「パイロット特性のある人のことだよ」という台詞で、ニュータイプの方は歴史の彼方に置き忘れられていないことが判明する。ガンダム・タイプのモビルスーツは存在しなかったがニュータイプはいた、そんな“前日譚”を想像できる。
 そのニュータイプも、「昔さ、ニュータイプってモビルスーツに関してはスペシャリストがいたよな。そういうのってたいがい個人的には不幸だったんだよな」という台詞で、ニュータイプの存在も「昔」であることが判明する。想像できるには「ガンダムタイプの存在しない時期にニュータイプがいて、それすら一昔前だった」という“前日譚”で、絶妙な「時間」経過を現している。

 「ガンダムが操縦できるからって」と叱責されることで、シーブックがそれなりの戦果をあげていること、セシリーに会いにいったのは独断であったことなどがわかる。ここにも“前日譚”が隠されている。「時間」の飛躍がある。

 裏切ったアンナ・マリーについて「チビたちが懐いてちゃってなー」という台詞で、彼女の人柄と懐くだけの「時間」が経過したことを現している。

 セシリーが出撃するというときモニカが心配するが、ここにも「時間」の飛躍がある。「いい娘さんなんだよ」というモニカはセシリーをよく知っている風でここにも“前日譚”が隠されている。

 漂流するセシリーの名を連呼するシーブックがいて、そこにザビーネが来る。ラフレシア撃破後の「時間」経過を現しているのだろう。
 ザビーネがスペース・アークを見逃すのは、さらなる「時間」経過だ。
 それだけ長くシーブックがセシリーの名前を連呼していたことがわかる。

 そしてクライマックスに向けて、この「時間」の飛躍は、唐突に消える。
 あとは“リアルタイム”で進行することになる。
 “リアルタイム”に寄り添うようにシーブックはじりじりと感覚を開いていく。そして“リアルタイム”で流れていくセシリーの花をみつける。
 「時間」の飛躍を多用したフィルムだけがもつ静謐な“リアルタイム”のなかでシーブックとセシリーは見つめ合うことになる。
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